漫画研究室

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鬼滅の刃がアニメをきっかけに爆発的に売れてる理由を考えてみた

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鬼滅の刃」公式サイト|集英社 https://kimetsu.com/comics/

注意

この記事は、本ブログの管理人のTwitterアカウント@shima_mangaで募集したアンケートの結果を基に考えたものです。回答には偏りがあることを念頭に入れてご覧ください。

 

鬼滅の刃が最近バカみたいに売れてます。

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スペースさん@space_WTが作成されたグラフです。許可を得て掲載しています。

※これは累計発行部数のグラフですが、売上も同じような推移をしてると思います。

 

疑問に思うのは「何故ここまで一気に売れ出したのか?」です。

 

まず考えられるのはアニメの影響でしょう。

グラフの赤く塗っている部分がアニメの放送期間を表しています。アニメをきっかけに急激に部数が伸びていることが分かります。

しかし、アニメ化をした全ての作品がここまで急激に伸びるわけではありません。

鬼滅のアニメのクオリティが高かったのは一つの要因としてあるでしょうが、それだけで説明できる現象ではないと思います。

 

そこで、鬼滅の単行本を購入している方にアンケート調査を行い、鬼滅がアニメをきっかけに爆発的に売れてる理由を自分なりに考えてみました。

 

 

 

 

売れるポテンシャルは元々あった説

アニメをきっかけに売れ出した鬼滅ですが、当然アニメ前の原作が面白くなかったわけではありません。アニメ前でも1巻あたり20万部程度売れていた人気作品でした。

しかし、1巻あたり200万部売れている現状から考えると180万人もの潜在的な読者を逃していたとも言えます。元々面白かったのにも関わらず潜在的な読者を獲得し損ねていた。

つまり「売れるポテンシャルは元々あったが、それを十分に発揮できていなかった」のではないでしょうか。

 

というわけで、まずは鬼滅が元々持っていたはずの「売れるポテンシャル」について考えていきます。

 

売れるポテンシャルとは何なのか

そもそも「売れるポテンシャル」とは何でしょう。私は「どれだけ多くの人に面白いと思われるか」だと思っています。

あなたが大好きな作品は誰かの大嫌いな作品かもしれません。人によって「面白い」の感性は違います。つまり「面白い」というのは主観的なものでしかなく「絶対的に面白い」なんてものは存在しないのです。

となると、売れる漫画とは「より多くの人に面白いと思われる漫画」と言えるのではないでしょうか。

 

鬼滅には、この「より多くの人に面白いと思われる」特徴が2つあると思います。

まず一つ目は「ライト層でも読みやすいシンプルさ」。二つ目は「性別・世代を問わず感情移入しやすい戦う動機」です。

 

ライト層でも読みやすいシンプルさ

鬼滅は非常にシンプルです。

基本的に「人vs鬼」の構図で話が進みます。第三勢力と呼べるのは珠世さんと愈史郎くらいでしょう。2つの勢力だけで話が展開されるため、ストーリーが複雑にならずシンプルで理解しやすいです。

また、メインのキャラ数が少ないです。しかも敵キャラを含め多くのキャラのバックグラウンドが回想で明らかにされるため、キャラの個性が印象に残りやすく魅力が伝わりやすいのではないでしょうか。

 

シンプルで内容を理解しやすく読みやすいため、普段漫画をあまり読まないライト層にも人気が広がったのではないでしょうか。

 

以下のグラフは、私がとったアンケートの集計結果です。単行本を購入し始めた時期で、アニメの「放送前」「放送中」「放送後」の3グループに分類しています。

 

毎週(月)読んでいる連載作品数

青:0作品 赤:1~10作品 黄:11~20作品 緑:21~30作品 オレンジ:31作品以上

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放送前に単行本を買い始めた人は、普段から読んでいる連載作品数が多い傾向にあります。

放送中・放送後に買い始めた人は、普段から読んでいる連載作品数が少ない傾向にあります。

 

鬼滅以外で単行本を買っている現在連載中の作品数

青:0作品 赤:1~5作品 黄:6~10作品 緑:11~15作品 オレンジ:16作品〜

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放送前→放送後になるにつれ、「0作品」や「1~5作品」など、少ない作品数を選択した割合が高くなっています。

 

これら2つのグラフから、「放送前→放送後になるにつれ、ライト層の割合が高くなっていくと読み取れると思います。

 

性別・世代を問わず感情移入しやすい戦う動機

炭治郎の戦う動機が「鬼になった妹を救う」なのも、より多くの人に面白いと思われる要因の一つだと思います。「家族を救いたい」という感情は性別・世代を問わず理解・感情移入しやすいからです。

ワンピースの「海賊王になる」やヒロアカの「最高のヒーローになる」など、他の王道バトル漫画の壮大な大目標に比べて、鬼滅では目標が読者にも身近な規模に収まっており目標への共感がしやすくなっています。

戦う理由に共感できれば、主人公のことを応援したくなり、作品にハマっていくはずです。

 

他にも鬼滅がヒットした要因はあると思いますが、ここでは「売れた理由」ではなく「爆発的に売れた理由」をメインに考えることにします。

つまり、「なぜアニメ前は売れていなかったのか」という疑問について考えていきます。

 

 

 

原作とアニメの第一印象

今では1巻あたり200万部以上売れている鬼滅ですがアニメ化前は20万部程度の売上でした。なぜアニメ化まではそのポテンシャルを発揮できていなかったのでしょう。

思いついた理由は「第一印象が悪かった」です。

つまり、読めば面白いのに第一印象が悪いせいで読もうとした人がそもそも少なかったのではないでしょうか。

 

絵柄の癖

まず挙げられるのは、絵柄の癖です。ハマった人にはむしろ魅力に思えてくるのかもしれませんが、間違いなく独特の画風ではあります。初見の人が敬遠する要因になっていても不思議ではありません。

一方、アニメは「神作画」と呼ばれるように多くの人に受け入れられやすい絵柄でした。私がとったアンケートでも「アニメの作画が良かった」と評価した人は9割近かったです。

 

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原作の絵とアニメの絵のどちらを先に見るかでかなり印象は変わってきそうですね。

 

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(左)「鬼滅の刃」公式サイト|集英社 https://kimetsu.com/comics/  (右)「鬼滅の刃」公式ポータルサイト https://kimetsu.com

 

暗い雰囲気

次に挙げられるのは雰囲気の暗さです。

これには画風に加えてストーリーの性質も影響していると思います。スカッと主人公が悪者を倒して勝利!イェイ!とはならない切ないストーリーが本来は鬼滅の魅力なんですが、初見の人には「地味だな〜」と思われてしまう要因だったのかもしれません。

一方アニメでは、原作と同じストーリーではありますが、アクションや効果音、BGMがついたことで地味さ・暗さが払拭されたのだと思います。私がとったアンケートでも「バトル描写」「呼吸のエフェクト等の演出」を評価した人は多かったです。

 

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第一印象の良いアニメで、多くの潜在的な読者を惹きつけることが可能になったのではないでしょうか。

他作品に比べて伸び率が大きいのは、アニメが原作の弱点をちょうど補う形になっていたからではないかと思います。

 

話題と動画配信サービスの相乗効果

グラフを再び見てみると、伸び率はアニメ放送中よりアニメ終了後の方が高いことが読み取れます。

 

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スペースさん@space_WTが作成されたグラフです。許可を得て掲載しています。

 

これには増刷が間に合っていなかったことも影響していると思われますが、それ以外にも要因があると思われます。

 

その要因は「動画配信サービスの普及」ではないでしょうか。鬼滅のアニメは20の動画配信サービスで配信されました。興味を持った人が気軽にアニメを視聴できる環境が整っていたと言えそうです。

そして、このアニメを視聴しやすい環境が話題との相乗効果を産んだのではないでしょうか。話題になっているのを聞いて少しだけ興味を持っただけの人でもアニメを通じて鬼滅に触れることができました。「話題になる⇄アニメを観る」の連鎖で加速度的に視聴者が増え、それにつれて読者も増えたと考えます。

 

実際に、アンケートでは、アニメ放送後に単行本を購入し始めた人のおよそ7割が「動画配信サービスを利用してアニメを見ていた」と回答しました。

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まとめ

「元々大ヒットするポテンシャルはあったが第一印象の悪さで敬遠されがちだった。見栄えのするアニメを観て、多くの人が鬼滅にハマり出す。さらに話題と動画配信サービスの相乗効果で加速度的に人気が広がった。」という結論に至りました。

 

 

 ここまで読んで頂きありがとうございました!

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また別の記事でお会いしましょう!

 

アンケートの詳しい集計結果はこちらから。

 

SPY×FAMILY」のアンケート調査もあります。

鬼滅の刃 22 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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鬼滅の刃 8 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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鬼滅の刃 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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