漫画研究室

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レッドフード総括 良かった点と悪かった点:「無効化」の伏線の分かりにくさとストレス

レッドフードの総括やります。
ケイドロあたりから連載中は流し読みになってたんですが、改めて読み返してみると色々と思うところがあったので。

良かった点

「何がダメだったか」みたいな話だけするのもアレなので、良かった点も挙げてバランスを取っておきます。

個人的に良いと思ったのは、「食事に正義も悪もない」というテーマ、デボネアの見開き、「俺たちの戦いはこれからだ」エンドです。

「食事に正義も悪もない」というテーマ

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レッドフード1話 川口勇貴 集英社

主に序盤の数話で描かれてたテーマ。
人狼が人を食う」ことを善悪ではなく食事として扱っているのが個人的に好きでした。非情なようで真摯な向き合い方ですよね。

人狼が人を喰う」の逆の「人が人狼を狩る」にも同じスタンスでした。
ドドー兄弟の共喰いにキレるベローに対して「意味が分からない 私たちこそ奴らを殺そうとしてるのに」とグリムが言ってしまうところが好きですね。実際そうなんですよ。

うわべを取り繕った綺麗事を語るよりも生臭い現実を晒してしまう作風の方が個人的に好きです。

デボネアの見開き

8話。巨大な化け物を追い払う迫力抜群の見開き。

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8話

「うお!この見開きいいな!」と反射的に思ったことを覚えています。
こういう分かりやすく面白いポイントが沢山あると良いですよね。

デボネアを解説するグリムの「広い海原は彼女が唯一全力を出せる場だ」というセリフも好きです。なんかカッコいい。

「俺たちの戦いはこれからだ」エンド

最終話。
打ち切り漫画の象徴のようなセリフで〆。一周回って珍しいのでは?

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15話

ベローとグリムが並んだ絵がシンプルにカッコいいですし、打ち切り漫画の象徴のようなセリフで終わらせてしまう潔さもカッコいいですし、作品の文脈(シナリオに囚われない物語がここから始まる)に合致していたのも凄いなと。




悪かった点

ベローの「無効化」の伏線が良くなかったんだと思います。

伏線は回収されたときに初めて面白さが生まれるもので、瞬間的には意味の分からないストレスです。なので回収されるまでは「この描写には意味がある」と読者に信じてもらわなきゃいけないわけです。

レッドフードでは、ベローの「無効化」の伏線を仕込みすぎたせいで、意味があるかどうか分からない伏線が多くなりすぎていたと思います。
そのせいで、本来は意味のある伏線のことを意味のないつまらない描写と勘違いしまうことがありました。


伏線かどうか分からなかった描写の例は、ブレーメンの退場です。

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7話

伏線として認識するべきか悩んだエピソードでした。

今になって考えると「無効化」の影響で活躍できずに退場したキャラだったと分かりますが、当時は「こんなにあっさり退場させるなら、そもそも何のために登場させたの?」と違和感ありまくりの描写でした。あまりに微妙だったので印象に残っています。


あと、グリムのポンコツ化も「無効化」の伏線がマイナスに働いた例だと思います。

本来のグリムは作品の核を担う魅力的なキャラで、自分もそういう活躍を期待していたんですが、婆さん人狼の正体に気づくのが遅れたり、シンデレラによる村焼きを防げなかったりと、いまいち活躍できていませんでした。
今になって考えると、これはベローの「無効化」の影響で設定が侵食されていたからだと納得できるんですが、「無効化」が明らかになる前は、単にグリムが活躍できていないだけと思ってました。

グリムを活躍させないという制作上のミスではなく、意図的に活躍させてなかったんですね。もうこれは、伏線が作品本来の面白さを損なっていたのでは?


悪い点の総括。

  • 伏線を伏線と認識できず、ただのストレスになっていた
  • 「無効化」の伏線が物語そのものの面白さを損なっていた


ここまで読んで頂きありがとうございました。
ベローの「無効化」の設定を把握した状態で再読すると違和感が半減してるので、レッドフード再読がオススメです。